このページの要点
- 講演は言語の著作物の例で、資料は創作した講師が著作者。主催者が使えるのは、許諾された利用方法と条件の範囲内だけである。
- 権利を移すなら「譲渡」と書き、27条・28条を特掲する。人格権は譲渡できないため、範囲を限った不行使の約束にする。
- 講師の既存の資料とノウハウは、移さずに利用の許諾にとどめる。第三者の素材は、引用の要件と権利処理の責任を書く。
- 書き起こしや要約は複製・翻案になり得る。参加者による共有は、私的使用の限度を示し、規約で禁止の型を選ぶ。
結論:講師のスライドは講師の著作物。主催者が使えるのは、許諾された範囲だけ
講演のスライドや配布資料について、主催者と講師の考えがすれ違う場面があります。主催者は、「資料は催しのために作ってもらったのだから、配布も保管も次回の使い回しも自由だ」と考えがちです。講師は、「資料は自分が作った著作物であり、その場の参加者に見せるために提供したものだ」と考えがちです。どちらの考えも、法律の仕組みを正確にたどると、半分だけ当たっていて、半分は外れています。
著作権法の基本は、はっきりしています。資料を創作した人が著作者であり、著作権(複製する権利、公衆に送信する権利、改変して利用する権利など)は、原則として著作者に生じます。資料の利用は、著作権者の許諾を受けた者が、その許諾に係る利用方法と条件の範囲内で行えます(著作権法63条1項・2項)。つまり、主催者が資料を使えるのは、講師が許諾した範囲だけです。範囲が書かれていなければ、争いの余地が広がります。
このページでは、次の5点を順に説明します。
- スライド、配布資料、講演そのものは、誰のどんな著作物か。
- 主催者が使える範囲を、許諾の形でどう書くか(利用の範囲の整理)。
- 「すべての権利を主催者に移転する」と書く場合に、必要な特掲と人格権の扱い。
- 講演の書き起こし、要約、記事化など、記録を作るときの扱い。
- 他人の図表・写真・データを資料に使うときの引用と権利処理、参加者による配布資料の共有の禁止の書き方。
講師との約束全体は契約の全体像のページ、依頼書の中での資料の項目は講演・登壇の依頼書のページ、録画や配信は録画・配信・アーカイブのページで扱います。このページは、資料そのものの権利に集中します。
スライド、配布資料、講演そのもの:誰の、どんな著作物か
著作権法2条1項1号は、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義しています。同条2号は、著作物を創作する者を著作者としています。また、10条1項は、著作物の例を挙げています。その1号に「小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物」とあるとおり、講演は、条文自体が言語の著作物の例として挙げています。
ここで、混同しやすい三つのものを分けます。
講演の場面の三つの著作物(一般的な整理)
| 対象 | 著作物としての性格 | 留意点 |
|---|---|---|
| 講演そのもの(口頭で話した内容) | 言語の著作物(著作権法10条1項1号)。話し方や表現に創作性があれば、著作物になる | 事実の伝達にすぎない雑報や時事の報道は、言語の著作物の例から除かれる(同条2項)。事実だけを淡々と話しても、保護される範囲は限られる |
| スライド | 文章、図表、イラスト、レイアウトの組合せ。文章は言語の著作物、学術的な性質を有する図表は図形の著作物(同項6号)など | 個々の素材と、全体の構成の両方に創作性があり得る。創作性が乏しい簡単な文言だけのスライドは、保護が弱い |
| 配布資料 | スライドと同様。講演の要点をまとめた冊子、ワークシート、チェックリストなど | データ(統計の数値そのもの)は著作物にならないが、その選択や配列に創作性があれば、編集の面で保護される場合がある |
講演と資料は、保護される範囲が違いますが、いずれも、誰が創作したかで著作者が決まります。講師が自分で作ったなら、著作者は講師です。講師が所属先の従業員として、業務で作った資料であれば、著作権法15条1項により、法人等の発意に基づき、その業務に従事する者が職務上作成し、法人等が自己の著作の名義の下に公表する著作物の著作者は、契約や勤務規則に別段の定めがなければ、その法人等です。つまり、講師が企業の従業員で、企業の業務として講演する場合、資料の著作者は企業になり得ます。この場合は、講師個人との約束ではなく、所属先との約束として資料の権利を整理する必要があります。
主催者が講師に外部委託する場合、資料は講師(または講師の所属先)が著作者です。主催者に著作権が自動的に生じることはありません。主催者が資料の作成に口を出した、体裁を指定した、という程度では、主催者は著作者になりません。創作的な表現に実質的に関わったかどうかが基準です。
資料が複数人の共同作業で作られることもあります。講師と、講師の補助者、主催者の担当者が一緒に作った場合は、権利が共有になる可能性があり、その場合は、共有者の同意がなければ利用の仕方が制限されます。共同で作るなら、最初に権利の帰属を決めておくのが無難です。
主催者が使える範囲を、許諾の形で書く
講師が著作者であるとき、主催者が資料を使うには、許諾が必要です。著作権法63条は、著作権者が他人に著作物の利用を許諾できること(1項)、許諾を得た者は許諾に係る利用方法と条件の範囲内で利用できること(2項)、そして、利用権は著作権者の承諾を得ない限り譲渡できないこと(3項)を定めています。
この3項が、実務では重要です。主催者が許諾を受けた利用権を、共催者や協賛企業、別の講師、外部の制作会社などに「譲る」ことは、講師の承諾なしにはできません。主催者が単独で許諾を受けていても、共催者に資料を渡して使わせるなら、その点も許諾の範囲に入れておく必要があります。
許諾の範囲を決めるときは、利用の場面を区切って確認します。次の表は、よくある場面ごとに、許す・許さない・条件付きの別を整理するための枠組みです。
資料の利用の範囲(確認の枠組み)
| 利用の場面 | 講師が許す基本形 | 主催者が求めがちな形 |
|---|---|---|
| 当日の会場での上映・配布 | 許す | 許す |
| 参加者への事後のデータ配布(PDFなど) | 条件付き | 許す |
| 同じ催しの録画・アーカイブへの映り込み | 条件付き | 許す |
| 主催者の社内での保管・社員への共有 | 条件付き | 許す |
| 別の催しや次回開催での再利用 | 許さない | 条件付き |
| 共催者・協賛企業への提供 | 許さない | 条件付き |
| SNSやウェブサイトへの掲載(抜粋を含む) | 許さない | 条件付き |
| 講師以外の人が登壇して使うこと | 許さない | 条件付き |
| 書籍化・商品化・有料教材化 | 許さない | 許さない |
表の「講師が許す基本形」は、一般的な傾向としての目安です。実際には、講師と主催者の話し合いで決めます。「条件付き」は、期間、媒体、有償・無償、名義の表示などの条件を付ける場合を指します。
許諾の範囲は、場面ごとに、期間(いつまで)、媒体(紙か、データか、ウェブか)、対価(無償か追加報酬か)、名義の表示(講師の名前を出すか)を添えて書くと、具体的になります。許諾の範囲が曖昧なまま、主催者が「この程度はよいだろう」と使うと、講師からの苦情の原因になります。
許諾の方法としては、「利用許諾」と「権利の譲渡」があり、両者の違いは次の節で説明します。参加者に事後配布するPDFの範囲、アーカイブの期間などは、録画・配信・アーカイブのページと合わせて決めておくと、二度手間になりません。
「すべての権利を主催者に移転」と書くとき:特掲・人格権・既存の資料
多くの契約書で見られる傾向として、主催者側から提示される書面には、「講師が作成した資料に関する著作権その他一切の権利は、主催者に帰属する」と書かれていることがあります。逆に、講師側が提示する書面には、「資料の権利は講師に帰属し、主催者は事前の書面による承諾なく複製、録画、公衆送信などをしてはならない」と書かれていることもあります。両端があり、その間に、実務で現実的な着地点があります。
主催者に権利を移したいなら、書き方に注意が必要です。まず、著作権は創作した者に生じるのが原則です(職務著作の場合を除く)。そのため、「主催者に原始的に帰属する」という書き方は、契約で著作者を決める趣旨としては、不正確になります。権利を主催者に移すなら、「譲渡する」と書くのが通常の整理です。
次に、著作権を譲渡する契約では、著作権法27条(翻訳権・翻案権等)と28条(二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)の権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は譲渡した者に留保されたものと推定されます(同法61条2項)。つまり、「著作権を譲渡する」とだけ書いても、資料を改変して利用する権利(27条)や、その改変した資料を他人が利用することに対する権利(28条)は、講師に残っていると推定されます。主催者が資料を加工して使う予定なら、「著作権法27条及び28条の権利を含む」と明記する必要があります。
三つ目に、著作者人格権があります。著作権法59条は、著作者人格権は著作者の一身に専属し、譲渡することができないとしています。人格権には、公表権(18条)、氏名表示権(19条)、同一性保持権(20条)があります。講師が権利を譲渡しても、人格権は講師に残ります。そこで契約では、「著作者人格権を行使しない」という約束(不行使特約)を入れるのが通例です。ただし、人格権の不行使を約束すると、講師の氏名が表示されない、資料が改変されても異議を述べられない、という状態になります。講師にとっては重い条件なので、範囲を限定する交渉がよく行われます。
四つ目に、講師が元から持っている既存の資料とノウハウです。講師が講演のたびに使う定番のスライド、事例、フレームワーク、講師が長年蓄積した知見は、特定の主催者のために作ったものではありません。これを主催者にすべて移すと、講師は他の催しで同じ内容を使えなくなります。そこで、「本催しのために新たに作成した部分」と「講師が従前から保有する資料・ノウハウ」を区別し、後者は講師に残し、主催者には利用を許諾するにとどめる、という書き方が一般的です。
書き方の例(一般的な例) 資料の権利の書き方
権利の帰属
理由著作権は創作者に生じるため、移すなら譲渡と書く。27条・28条は特掲しないと講師に残ると推定される(61条2項)。
人格権
理由人格権は譲渡できない(59条)。不行使の範囲は、講師の名誉を守る限度で絞る。
既存の資料
理由講師の定番の資料まで移ると、他の催しで使えなくなる。主催者は利用の許諾で目的を足りる。
条文例資料の権利を定める条文例(譲渡型の一般的な書き方)
- 本催しのために講師が新たに作成した資料(以下「本資料」という。ただし、講師が従前から保有する資料、ノウハウおよび第三者の著作物を除く。)の著作権(著作権法27条および28条に規定する権利を含む。)は、主催者が第○条の報酬を支払った時に、講師から主催者に移転する。
- 講師は、主催者が本催しの目的の範囲内で本資料を利用する場合には、本資料に関する著作者人格権を行使しない。ただし、講師の名誉または声望を害する態様での改変を除く。
- 講師が従前から保有する資料、ノウハウおよび第三者の著作物については、講師または当該権利者に権利が帰属する。講師は、主催者に対し、本催しの範囲内で、これらを利用することを許諾する。
- 主催者は、前項に定める以外の目的で、講師が従前から保有する資料等を利用する場合には、あらかじめ講師の書面(電子メールを含む。)による承諾を得る。
割合・金額は伏せています。譲渡型を選ぶと、主催者は資料を自由に使えますが、対価が重くなることがあります。許諾型で足りるなら、許諾の範囲を細かく書く方が、双方に無理がありません。
講演の書き起こし・要約・記事化:記録を作るときの扱い
講演の記録を文章にして残す場面があります。参加者への事後配布、会報への掲載、ウェブ記事、社内の議事録、報告書などです。この記録が著作権法上どう扱われるかは、作り方によって変わります。
講演を録音して、話した言葉をそのまま文字にする書き起こしは、講演という言語の著作物を、別の形に再現するものであり、著作権法21条の複製に当たり得ます。複製は、著作者が専有する権利なので、講師の許諾が必要です。書き起こしたものをウェブに掲載したり、会員に送信したりする場合は、公衆送信(同法23条)にもなり得ます。
要約や、記事としての再構成は、原文の表現を作り替える行為であり、翻案(同法27条)に当たり得る場合があります。話した内容の要旨を、自分の言葉でまとめた場合、アイデアそのものは保護されませんが、講演の表現上の特徴が残る形でまとめると、翻案と評価される可能性があります。いずれにしても、記録の形にして外部に出す場合は、事前に講師の確認を得るのが安全です。
実務では、記録を作る側が考えるべきことが三つあります。第一に、誰が作成するか(主催者か、外部の編集者か)。第二に、どの範囲で公開するか(参加者のみか、会員か、一般か)。第三に、講師が事前に内容を確認し、訂正できるか。講師が確認できない形で記録を公開すると、話した覚えのない内容が講師の発言として広まる危険があります。
確認の問いと理由講演の記録を作るときの確認の問い
記録の目的は、参加者への配布か、一般公開か。
公開の範囲が広がるほど、講師の許諾の範囲も広くなる。目的ごとに許諾を取る。
書き起こしのままか、要約・編集を加えるか。
編集を加えるなら、翻案(27条)の許諾も要る。編集の方針を講師に示す。
講師の事前確認を、いつ、どの形式で受けるか。
公開前の確認は、誤りの訂正と、講師の意図の確認になる。期限を決める。
記録の著作権は誰に属するか。
記録を作った人の創作性が加われば、新たな著作物になり得る。権利の整理を事前に行う。
他人の図表・写真・データを資料に使う:引用と権利処理の責任
講師の資料には、他人の著作物が含まれていることがあります。書籍の図表、統計のグラフ、写真、イラスト、他者のスライドの一部、新聞記事の抜粋。これらを使うには、原則として、権利者の許諾が必要です。ただし、著作権法は、一定の要件を満たす利用について、許諾なしに使える例外を定めています。講演資料で最も関わるのが、引用(同法32条)です。
著作権法32条1項は、公表された著作物は引用して利用することができるとし、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならないと定めています。実務では、自分の論旨が主で引用が従であること、引用部分が明確に区別されていること、引用の必要性があること、といった点を意識して判断します。また、引用では、出所の明示も必要です(同法48条1項)。著作者名が分かる場合は、それも示します(同条2項)。
講演資料でよく起きる誤りは、次のようなものです。
- ほかの講師のスライドをそのまま取り込み、出所を示さない。
- インターネット上の画像を、ライセンスを確認せずに使う。素材サイトの利用規約が、スライドの配布や再配布を禁じている場合もある。
- 書籍の図表を、一頁分まるごと貼り付ける。
- 資料の最後に参考文献を並べただけで、引用の要件を満たしたと考える。
また、非営利の上演等に関する著作権法38条1項があります。公表された著作物は、営利を目的とせず、かつ聴衆から料金を受けない場合には、公に口述することができる、というものです。ただし書で、口述を行う者に報酬が支払われる場合は適用されないと定めています。つまり、講師に報酬が支払われる催しでは、他人の文章を朗読する場面などで、この例外には頼れません。無償の勉強会で、報酬もなければ、この規定が働く余地はありますが、その場合でも出所の明示(48条1項3号の慣行がある場合)などの配慮が必要です。
権利処理の責任は、講師と主催者の契約で決めておきます。多くの契約書では、講師が第三者の著作物を使うときは、講師の責任で権利処理を行い、主催者に権利上の問題がない状態で資料を提供する、と書きます。主催者が資料を再利用する場合、第三者の素材は講師の許諾の範囲外であることが多く、再利用のときに問題になります。そこで、第三者の素材を使うときは、「再利用の可否」を講師が主催者に申告する、という手順を設けると、後の混乱を避けられます。
書き方の例(一般的な例) 第三者の素材の扱いの書き方
権利処理の責任
理由権利処理は素材を選んだ講師が最も把握している。再利用時の問題を、申告の手順で予防する。
素材サイトの画像
理由利用規約で、スライドの配布やデータ提供を禁じている素材がある。確認の責任を明確にする。
配布資料を参加者が共有・転載するとき:禁止の書き方
配布資料が参加者の手に渡ると、その先は主催者や講師の目が届きません。同僚に渡す、SNSに写真を載せる、社内の共有フォルダに保存する、といった行為が起きます。講師の側から見ると、苦労して作った資料が、無断で広がることには懸念があります。主催者の側も、参加者の行為によって講師との約束が破られる危険があります。
参加者の行為は、著作権法の仕組みで整理できます。参加者が資料を自分で保存・印刷することは、私的使用のための複製(同法30条)に当たり得ます。同条は、個人的に、または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使用することを目的とするときは、その使用する者が複製できると定めています。ただし、私的使用の範囲は「限られた範囲」であり、会社の同僚全員に回覧する、社内の共有ドライブに保存して多数が閲覧できる状態にする、という行為は、この範囲を超える可能性があります。また、SNSへの投稿やウェブ上での公開は、公衆送信(同法23条)であり、私的使用では説明できません。
そこで、主催者は、参加者向けの規約や配布資料の表紙で、利用の範囲を示します。禁止の書き方には、いくつかの型があります。
配布資料の共有・転載の禁止の書き方(一般的な類型)
| 型 | 内容 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 全面禁止型 | 複製、転載、第三者への提供を全面的に禁止する | 分かりやすく、講師の安心感が大きい | 参加者が自分用に保存することまで禁じると、現実的でない。私的使用の範囲を許す文言を添える |
| 目的限定型 | 参加者本人の学習・業務のために限り使用できる。第三者への提供、公開、商用利用は禁止する | 参加者の通常の使い方を許しつつ、広がりを防げる | 社内の同僚との共有を許すかどうかを明記しないと、解釈が分かれる |
| 範囲指定型 | 同じ会社の従業員など、特定の範囲での共有を許し、社外への提供を禁止する | 企業研修に向く | 「同じ会社」の範囲(子会社、委託先)を決めておく |
| 透かし・配布方式型 | 資料に参加者名の透かしを入れる、閲覧専用で配布する、紙のみで配布し持ち帰らせない | 禁止の実効性が高い | 手間と費用がかかる。参加者の利便性が下がる |
禁止の条項は、参加者に向けた規約に置く必要があります。講師との契約書に書いても、参加者には届きません。参加者への周知の方法(申込み画面での同意、資料の表紙、冒頭の口頭の案内)は、単発セミナーの参加規約のページで扱います。また、参加者がこれらの禁止に違反した場合の主催者の対応(資料の削除の求め、次回以降の参加の制限)も、あらかじめ決めておくと、実効性が高まります。
配布資料の取扱いが、共催者や協賛企業と関わる場合は、共催・協賛のページも確認してください。共催者に資料を渡すかどうか、渡すなら講師の承諾が要るかどうかは、前節の63条3項の問題でもあります。
起きがちなこと
資料の権利に関して、実際に起きやすい場面を整理します。
資料の権利で起きがちなこと
- 主催者が、講師の資料を次回の別の講師に渡して使わせ、講師から苦情が出た。
- 契約書に「著作権は主催者に帰属する」とだけ書いたが、27条・28条の特掲がなく、資料を改変して使えるのか疑義が生じた。
- 資料の権利を主催者に譲渡したため、講師が自分の定番のスライドを他の催しで使えなくなった。
- 講師の資料に他人の画像が含まれており、主催者が配布すると素材サイトの規約に反していた。
- 参加者がスライドの写真をSNSに投稿し、講師の未公開の事例が広がった。
- 講演の書き起こしをウェブに載せたが、講師の確認を経ておらず、発言の趣旨が違って伝わった。
- 共催者に資料を渡したが、講師は主催者だけに許諾したつもりだった。
- 録画に映り込んだスライドの他人の写真について、権利処理がされていなかった。
よくあるご質問
講師のスライドを、催しの後に参加者へPDFで配ってもよいですか?
講師の許諾の範囲によります。事前に「参加者への事後配布を許す」「期間と範囲を限る」と決めておけば問題ありません。決めていなければ、講師の承諾を得てから配るのが安全です。複製(著作権法21条)や公衆送信(同法23条)が関わります。
資料の著作権を主催者に譲渡してもらえば、自由に使えますか?
27条・28条の権利を特掲して譲渡すれば、改変しての利用も含めて、自由に使える範囲が広がります(61条2項)。ただし、著作者人格権は譲渡できないため(59条)、不行使の約束も合わせて取る必要があります。また、講師の既存の資料や第三者の素材は、譲渡の対象から外れるのが通常です。
講演の内容は著作物として保護されますか?
講演は、条文上、言語の著作物の例として挙げられています(著作権法10条1項1号)。ただし、創作的な表現である必要があり、事実の伝達にすぎない部分や、アイデアそのものは保護されません。資料や録画の利用には、講師の許諾が基本となります。
他人の図表を引用するときに、最低限守ることは何ですか?
公表された著作物であること、公正な慣行に合致すること、引用の目的上正当な範囲内であること、引用部分を明確に区別すること、出所を明示すること、が基本です(著作権法32条1項、48条1項)。自分の論旨が主で引用が従という関係も意識します。
参加者が配布資料を同僚に見せるのは、禁止できますか?
参加者に向けた規約や資料の表紙で、利用の範囲を示せば、契約上の約束として整理できます。私的使用のための複製(著作権法30条)は限られた範囲に限られ、社内の多数への共有はこの範囲を超える場合があります。禁止するのか、一定の範囲で許すのかを、決めて書いておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、契約の内容や催しの仕組みによって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 公正取引委員会