講師の辞退・体調不良・災害・延期:代役の手配と、中止のときの講師料

「誰の事情で出られないか」と「いつ分かったか」の二軸で、講師料、代替の手段、通知、実費の負担を決めておきます。参加者への返金は主催者の責任として、講師への求償の範囲を分けて書きます。

トップページ › 講師の辞退・体調不良・災害・延期:代役の手配と、中止のときの講師料
講師の急病と主催者の中止、天災による中止では、民法の出発点が異なります。依頼書に場面ごとの扱いがなければ、直前に対立が生じます。

このページの要点

  • 辞退は、講師のやむを得ない事由・自己都合・主催者の事情・双方に責任がない事由の四つに分け、民法415条・536条・648条・651条を出発点にする。
  • 代役・日程変更・録画での代替・中止の優先順位と、協議の期限を決め、決まらない場合の判断者を主催者とする。
  • 主催者の中止では、通知の時期と準備の進み具合に応じた講師料と実費の考え方を表にして書き、損害賠償には範囲と上限を置く。
  • 不可抗力は例示と通知、協議、実費の按分まで書き、参加者への返金と講師への求償を切り分ける。

結論:「誰の事情で」「いつ分かったか」の二軸で、講師料・代替・通知を先に決める

セミナーや講演会は、日時が決まっている催しです。講師が当日に出られなくなれば、参加者を集めた主催者は大きな痛手を負い、準備を重ねた講師にも、移動や資料作成の費用が残ります。逆に、主催者が参加者の集まりが悪いなどの理由で中止にすれば、講師の準備と空けた日程が無駄になります。契約書作成の実務では、依頼書や業務委託契約書に、この二つの場面の取決めがまったく書かれていない例が多く見られます。

書く前に、場面を次の四つに分けます。

  • 講師のやむを得ない事由:急病、事故、家族の事情、感染症、交通機関の運休など、講師の責任とはいえない事情で出られなくなる場合。
  • 講師の自己都合:別の仕事を優先する、気が進まなくなった、条件に不満が出た、といった事情で辞退する場合。
  • 主催者の事情:参加申込みが少ない、会場の都合が変わった、共催者との調整がつかなかった、といった理由で、主催者が中止や延期を決める場合。
  • 双方に責任がない事由:天災、停電、会場の使用不能、公的な要請など、当事者の力が及ばない事情で開催できない場合。

もう一つの軸は、いつ分かったかです。開催の数か月前か、直前か、当日か、すでに開催後か。同じ辞退でも、代役を探す時間があるかどうかで、主催者の損害は大きく変わります。このページでは、二つの軸を組み合わせて、辞退と中止のときの講師料、代役、通知、費用の整理の仕方を、民法の条文にそって説明します。参加者への返金の定め方は単発セミナーの参加規約で、トラブルになったときの全体の整理はセミナー・講演でうまくいかなかったときで扱い、ここでは講師と主催者のあいだの取決めに絞ります。

講師が出られなくなる場面と、民法の出発点

講師との契約が、時間を提供して話をするという「事務の委託」(準委任、民法656条)なのか、資料の完成を約束する「請負」(同法632条)の性質を含むのかで、民法の当てはめは変わります。登壇の依頼は、多くの場合、準委任に近い性質を持ちます。準委任には委任の規定が準用されます(同法656条)。

場面ごとの民法上の出発点と、契約で決めておくこと

場面民法上の出発点契約で決めておくこと
講師の急病・事故講師に責めに帰すべき事由がなければ、債務不履行の賠償責任は負わない(415条1項ただし書)。当事者双方の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときは、主催者は講師料の支払を拒める場合がある(536条1項)通知の方法と時期、代役・日程変更・録画での代替の協議、準備済みの作業の対価
講師の自己都合の辞退準委任は各当事者がいつでも解除できるが、相手方に不利な時期の解除は、やむを得ない事由がない限り損害賠償の問題になる(651条)辞退できる期限、直前の辞退の扱い、代役の手配への協力、違約金を置くか
講師と連絡がつかない履行を拒絶する意思が明確なとき等は、催告なしの解除ができる場合がある(542条1項)連絡手段、確認の期限、期限までに連絡がない場合の扱い
主催者の中止・延期委任の解除(651条)。講師が履行できなくなった原因が主催者の責めに帰すべき事由にあると評価されるときは、主催者は講師料の支払を拒めない(536条2項)中止の判断者、通知の期限、準備済みの費用と講師料の扱い
天災・交通障害・会場の使用不能当事者双方の責めに帰することができない事由による履行不能(536条1項)不可抗力の例示、通知、代替開催の協議、費用の按分

表の最後の列に共通しているのは、「民法の規定は、当事者の合意で補い、変えられる」ということです。民法は、辞退の理由・時期・準備の進み具合を細かく区別した結論を、あらかじめ示してくれるわけではありません。たとえば、講師の急病で出られなくなった場合でも、すでに半分以上の資料を作っていたとき、その作業に対する報酬はどうなるのか。準委任では、履行の中途で終了したときや、委任者の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときに、既にした履行の割合に応じて報酬を請求できる、とされています(同法648条3項)。割合の考え方を、契約書に書いておくほうが、争いを避けられます。

また、損害賠償の額をあらかじめ決める「賠償額の予定」や違約金は、当事者が自由に定めることができます(同法420条)。ただし、実際の損害と大きくかけ離れた額は、争われる余地があります。講師が事業として登壇するか、個人として謝礼を受けて登壇するかによって、適用される法律の考え方が異なることもあるため、辞退時の違約金は、主催者が実際に負う損害(代役の手配費用、会場の費用の一部など)に結びついた範囲にとどめるのが、後で見直されにくい書き方です。

代役・録画・日程変更:優先順位と協議の期限を決める

講師が出られなくなったとき、主催者が取れる手段は、おおむね次の四つです。契約では、どの順番で検討するかと、いつまでに決めるかを書きます。

  1. 日程変更:講師の都合のつく別の日に延期する。参加者の都合が変わるため、参加者への案内の手間が最も大きい手段です。
  2. 代役:別の講師に登壇してもらう。講師自身が紹介する場合と、主催者が探す場合があります。内容が変わるため、参加者の同意の取り方も問題になります。
  3. 録画・事前収録による代替:講師が事前に収録した映像を流す、または当日オンラインで登壇する。講師の状態によっては使えず、録画の許諾の範囲も確認が必要です(録画・ライブ配信・アーカイブ)。
  4. 中止:上記が取れない場合に、開催しない。参加者への返金と、講師への対価の整理が必要になります。

辞退が分かってから決まるまで(通知・協議・決定)

1通知

分かった時点で、すぐに知らせる

  • 講師は、出られないと分かった時点で、主催者に連絡する
  • 電話とメールなど、二つ以上の方法を決めておく
  • 連絡する相手(担当者と代理の担当者)を書いておく
  • 理由と、見通し(回復の見込み、代役の候補)を伝える

2協議

代替案を一緒に検討する

  • 日程変更・代役・録画・中止の優先順位に沿って検討する
  • 協議の期限(例:開催の○日前、開催の前日まで)を決める
  • 代役の候補、資料の使用の可否を確認する
  • 参加者へ知らせる文面を、主催者が準備する

3決定

決めた内容を書面に残す

  • 決めた代替案と、講師料・費用の扱いをメールで確認する
  • 参加者への案内と、返金の要否を決める
  • 代役が決まった場合は、代役との条件を別に書面にする
  • 決まらない場合の最終的な判断者を、主催者とする

協議が長引くほど、参加者への案内の期間が短くなります。協議の期限は、参加者への案内に必要な日数から逆算して決めます。

代役を立てる場合は、いくつか確認が必要です。講師が作った資料を、代役が使ってよいかは、講師の資料に関する許諾の問題です(講演スライド・配布資料の著作権)。代役の講師料を誰が負担するか、代役の紹介に対して元の講師が責任を負うか、参加者に対して講師の変更をどのように知らせるか、も決めておく必要があります。講師の変更は、告知した内容と実際の内容が異なることになるため、告知の表示の見直しにもつながります。

条文例登壇不能時の対応(書き方の例)

  1. 乙(講師)は、病気、事故、災害その他やむを得ない事由により、本講演に登壇できないこととなった場合は、そのことを知った後、速やかに、甲(主催者)に通知しなければならない。
  2. 前項の通知を受けたときは、甲及び乙は、日程の変更、代役の手配、録画その他の方法による代替その他の合理的な代替措置について、誠実に協議する。協議は、遅くとも開催日の○日前までに行うものとし、決まらない場合は、甲が開催の可否を判断する。
  3. 前項により代替措置を講じた場合の、乙の報酬、旅費その他の費用の取扱いは、次のとおりとする。(1) 代役が登壇したとき:乙は、既に行った準備に相当する額を請求できる。(2) 日程を変更したとき:変更後の日程で、改めて本契約を履行する。(3) 開催を中止したとき:第○条の定めによる。
  4. 乙が、自己の都合により登壇できないときは、第1項及び第2項を準用する。この場合、甲が代役の手配のために現に支出した合理的な費用は、乙が負担する。

「やむを得ない事由」の例を列挙するか、列挙せずに協議で決めるかは、催しの性質で選びます。自己都合の場合の費用の負担は、実際に支出した額に限ると、見直されにくい書き方になります。

主催者側の中止:講師料と準備費用をどうするか

主催者が中止を決めたときの講師料は、民法の考え方では、主催者に責めに帰すべき事由があるかどうかで整理されます。主催者の事情による中止は、講師が履行できなくなった原因が主催者の責めに帰すべき事由にあると評価される場合があり、その場合は、主催者は、講師料の支払を拒めません(民法536条2項)。どの場合にそう評価されるかは、中止の理由と時期、講師の準備の状況によって変わります。もっとも、講師が免れた事務の分の利益は、返す必要が出てきます(同項後段)。準委任の途中で解除する場合は、割合報酬(同法648条3項2号)と、相手方に不利な時期の解除の損害賠償(同法651条2項)の問題になります。請負の性質を持つ資料作成の部分は、仕事の完成前に解除された場合、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬が問題になります(同法634条)。

こうした条文に頼るよりも、契約書に、中止の時期ごとの考え方を表にして書いておくほうが、分かりやすくなります。次は、時期と準備の状況に応じた書き方の整理です。数字は伏せています。

中止の時期と、講師料・費用の考え方の例(書き方の例)

中止の通知の時期講師側の状況講師料の考え方の例書いておくこと
開催の相当前(準備に着手する前)日程を空けているが、作業はしていない講師料は請求しない、または日程確保の対価として一定割合「相当前」を日数で定める。日程を確保した対価を認めるか
準備の途中(資料の作成後)資料を作成し、打合せを行った作成した資料の対価に相当する額、または講師料の一定割合資料の作成にかかった作業の確認方法。資料の権利の帰属
移動・宿泊の手配後交通機関や宿泊を予約している前項に加えて、取消手数料などの実費を主催者が負担実費の範囲、領収書の提出、払戻し可能分の取扱い
直前・当日空けた日程が埋まらず、準備も終えている講師料の全部または大部分直前の期間の定義、他の仕事を断った事情の確認

割合や金額は、案件の規模や講師の準備の量によって異なります。税込か税別かを明記し、実費は、領収書などの根拠で確認できる額に限ると、精算で揉めにくくなります。

書き方の例(一般的な例) 中止の扱いの書き方

主催者の中止

よくある書き方「主催者の都合で中止した場合も、講師料は支払わない。」
整えた書き方「主催者が、自己の都合により本講演を中止した場合は、中止の通知の時期に応じ、別表の割合により講師料を支払う。講師が既に支出した実費で、取り戻すことができないものは、主催者が負担する。」

理由中止の事情が主催者にあるのに、講師料を全く支払わないとする定めは、後で争いになりやすく、講師から契約を断られる原因にもなります。時期に応じた割合を決めておくと、双方が納得しやすくなります。

講師の辞退

よくある書き方「講師が辞退した場合は、損害を賠償する。」
整えた書き方「講師が自己の都合で辞退した場合は、主催者が代役の手配のために現に支出した合理的な費用を、講師が負担する。損害賠償の額は、講師料の額を上限とする。」

理由賠償の範囲が「損害」としか書かれていないと、参加者への返金や広告費まで請求されるのではないかと、講師が不安になります。範囲と上限を書くことは、主催者にとっても、請求の根拠を明確にする意味があります。

不可抗力

よくある書き方「不可抗力の場合は、双方とも責任を負わない。」
整えた書き方「不可抗力により開催できなくなったときは、双方は相手方に対して責任を負わない。この場合、講師が既に行った準備の実費は、主催者と講師が協議して按分する。」

理由責任を負わないだけでは、準備にかかった費用が誰の負担になるのかが残ります。実費の按分まで書いておくと、精算の食い違いを避けられます。

不可抗力と、通知の書き方

天災や感染症の拡大、交通機関の運休、会場の使用不能などで、開催できなくなる場合があります。契約書では、不可抗力の例を挙げ、通知と協議の手順を書きます。例は多く挙げすぎると、挙げていない事情が除かれると読まれるため、「その他当事者の責めに帰することができない事由」の包括的な文言を併せて置くのが一般的です。

不可抗力の条項に入れる項目

  • 例示:天災、火災、停電、感染症の拡大に伴う公的機関からの要請、交通機関の運休、会場の使用不能、その他当事者の責めに帰することができない事由。
  • 通知:事由が生じたことを知った後、速やかに相手方へ知らせること、方法(電話とメールの併用など)。
  • 協議:日程の変更、規模の縮小、オンライン開催への切替え、中止のいずれかを、誠実に協議すること。
  • 費用:すでに支出した実費の按分の考え方、講師の準備の対価の扱い。
  • 長期化:不可抗力が一定期間を超えて続くときに、契約を解除できること。
  • 講師個人の急病や事故との区別:不可抗力に含めるか、前の項目の「やむを得ない事由」として別に書くか。

講師の急病や事故は、「不可抗力」に含める書き方と、「講師のやむを得ない事由」として別に書く書き方があります。含めるなら、天災と同じく、双方が責任を負わず、実費は協議して按分することになります。別に書くなら、代役や日程変更への協力の義務を、講師に課すことができます。どちらが適しているかは、催しの規模と、代役の見つけやすさで決めます。

延期という選択:中止との違い

講師が出られない、会場が使えない、といった事情に直面したとき、中止ではなく延期を選ぶ場面も多くあります。延期は、契約を終わらせずに、日時だけを動かす対応です。中止と違い、講師料や実費の精算を先送りにできる反面、延期後の日程で講師が登壇できなくなるなど、新たな問題が生じます。契約書では、延期について次の点を決めておくと、延期のたびに交渉をやり直さずに済みます。

  • 延期できる回数と期限:延期は一回限りとするのか、複数回認めるのか。いつまでに新しい日程を決めるのか。
  • 延期後の日程の優先:講師の都合を優先して日程を決めるのか、主催者の都合を優先するのか。決まらない場合の最終的な扱い。
  • 講師料の扱い:延期後の日程で講師料を支払うのか、延期に伴う追加の準備や再度の移動の費用を誰が負担するのか。
  • すでに支出した実費:取消しにかかった費用(交通機関や宿泊の手配の変更手数料など)の負担。
  • 延期後に開催できない場合:延期後の日程にも講師が登壇できないとき、中止として扱い、中止の条項に移るのか。
  • 資料の扱い:延期の間に講師が資料を更新する場合、更新の費用と、参加者に配布する版の決め方。

延期の場合も、参加者との関係では、延期後の日程に参加できない人への対応が必要です。延期後の日程に都合がつかない参加者に返金するかどうかは、参加者向けの規約で定めます。延期が講師と主催者のあいだの合意で決まった場合でも、参加者との契約を変更する手続は、別に必要になります。参加者向けの規約の書き方は単発セミナーの参加規約で説明しています。

中止の判断者と、参加者への返金の責任分担

中止にするかどうかを誰が決めるのか、決めた後、誰が参加者に連絡し、返金の手続をするのかも、契約に書いておきます。判断者が決まっていないと、講師が「やるべきだ」、主催者が「やめるべきだ」と食い違ったとき、時間だけが過ぎます。

中止・辞退のときの役割分担

  • 開催の可否の判断主催者

    講師からの通知を受けて、期限までに主催者が決める。共催の場合は、共催者との協議の方法を共催契約に書く(共催・後援・協賛セミナーの契約)。

  • 講師への通知主催者

    中止や延期を決めたら、すぐに講師へ知らせる。通知が遅れると、講師が移動や宿泊の手配を取り消せず、実費が膨らむ。

  • 参加者への案内主催者

    中止、延期、代役の決定を、申込者全員へ知らせる。案内の方法と時期は、参加規約に書いておく。

  • 参加者への返金主催者

    参加者との契約の当事者は主催者であるため、返金は主催者が行う。参加者向けの条項は、消費者契約法9条1項1号の確認が必要(単発セミナーの参加規約)。

  • 講師への求償主催者と講師

    講師の責めに帰すべき事由で中止となった場合に、主催者が参加者に返金した額のうち、講師に請求できる範囲を決める。通常生ずべき損害に限るか、上限を置くか。

  • 代役との契約主催者

    代役の講師料、資料の使用、録画の可否は、代役と別に合意する。

参加者への返金は、講師の落ち度の有無にかかわらず、主催者が参加者に対して負う責任です。講師に求められる範囲は、契約で決めた範囲です。

講師に請求できる範囲は、民法の考え方では、通常生ずべき損害が中心です(民法416条1項)。特別の事情によって生じた損害は、当事者がその事情を予見すべきであったときに限って請求できます(同条2項)。実務では、損害賠償の額に上限を置き、講師料の額を上限とする書き方がよく見られます。上限を置く場合は、故意や重大な過失の場合は上限を適用しない、といった例外を併せて書くのが一般的です。

確認の問い:辞退・中止の条項を作る前に

確認の問いと理由依頼書を作る前に、主催者と講師が確かめる項目

  1. 辞退が分かったとき、いつまでに誰に知らせるか。

    連絡する相手と手段を決めておくと、連絡の遅れによる損害の拡大を防げます。

  2. 代役を立てる場合、誰が探し、誰の承諾が要るか。

    講師が紹介するのか、主催者が探すのか。承諾の主体と、資料の使用の許諾も決めます。

  3. 日程変更を認めるか。

    変更を認める場合の回数、期限、変更後の日程での講師料の扱いを決めます。

  4. 主催者が中止した場合の講師料はいくらか。

    通知の時期と、準備の進み具合に応じた割合を決めます。税込か税別かも書きます。

  5. 実費は誰が、どの範囲で負担するか。

    交通費、宿泊費、資料作成費、会場の手配費用のうち、取り戻せないものを対象にして、根拠となる書類を提出する決まりにします。

  6. 損害賠償に上限を置くか。

    上限を置く場合は、金額の基準(講師料の額など)と、例外(故意・重大な過失)を書きます。

  7. 参加者への返金は誰が行うか。

    主催者が行うことを前提に、講師への求償の範囲を決めます。

起きがちなこと:直前の辞退と中止をめぐる食い違い

場面別の「起きがちなこと」と、先に決めておくこと

  • 講師が前日に体調を崩した:連絡の手段が決まっておらず、主催者に伝わったのが当日の朝だった。連絡先を二つ以上決め、通知の期限を書く。
  • 代役が決まったが、告知した内容と話が変わった:参加者から返金の求めが出た。講師の変更が参加者の申込みの前提に関わる催しでは、変更時の返金の条件を参加規約に入れる。
  • 申込みが少なく、直前に中止した:講師はすでに資料を作成し、移動の手配も済ませていた。中止の判断の期限と、その期限以降の講師料の扱いを書く。
  • 講師が別の仕事を優先して辞退した:主催者は広告費を使っていた。賠償の範囲が決まっておらず、請求の根拠を示せなかった。実費に限る請求と上限を書く。
  • 天候で交通機関が止まり、講師が到着できなかった:不可抗力の例示に交通機関の運休がなく、オンライン登壇への切替えの協議も定められていなかった。例示と代替の手段を書く。
  • 延期した日程で講師が登壇できなくなった:延期は一回限りと考えていた主催者と、再延期もできると考えた講師が対立した。延期の回数と期限を書く。

辞退と中止は、起きてから決めようとすると、感情的な対立になりやすい場面です。依頼書の段階で、起きる可能性の高い順に取決めを置いておくことが、結局は講師との信頼を守ります。依頼書全体の書き方は講演・登壇の依頼書と契約書、講師料の組み立ては講師料・謝礼・旅費の決め方と合わせて確認してください。

よくあるご質問

講師が急病で出られなくなったとき、講師料は支払う必要がありますか。

当事者双方の責めに帰することができない事由で履行できなくなったときは、主催者は講師料の支払を拒める場合があります(民法536条1項)。一方、準委任で、すでに行った準備があるときは、履行の割合に応じた報酬を請求できる場合があります(同法648条3項)。どちらになるかは契約の内容と準備の状況によるため、依頼書に、準備済みの作業の対価の考え方を書いておくと安心です。

講師が直前に辞退したら、違約金を請求できますか。

契約書に定めがあれば、その定めに従うのが原則です(民法420条)。定めがない場合は、準委任の解除が相手方に不利な時期であったか、損害がいくらかが問題になります(同法651条2項)。違約金を置くなら、代役の手配費用など、実際に生じる損害に結びついた範囲にとどめるほうが、後で争いになりにくくなります。

主催者の都合で中止にした場合、講師料はいくら払うべきですか。

講師が履行できなくなった原因が主催者の責めに帰すべき事由にあると評価されるときは、主催者は講師料の支払を拒めません(民法536条2項)。もっとも、金額は、通知の時期と準備の進み具合によって変わります。中止の時期ごとの支払割合を表にして契約書に書いておくと、判断に迷いません。

代役を立てるとき、講師の許可は必要ですか。

代役が元の講師の資料を使うなら、資料の権利を持つ講師の許諾が必要です。代役を立てること自体は、主催者と講師のあいだで、依頼書に書いた手順に従います。紹介するのは講師か主催者か、承諾は誰が行うかを、先に決めておきます。

感染症や災害で開催できなくなったときは、誰も責任を負わないのですか。

当事者双方の責めに帰することができない事由で履行できないときは、賠償責任は生じにくいのが原則です(民法415条1項ただし書、536条1項)。ただし、すでに支出した実費をどう分けるかは別の問題です。不可抗力の例示、通知、協議、実費の按分を契約書に書いておくと、精算の食い違いを避けられます。

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、契約の内容や催しの仕組みによって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 公正取引委員会

アトラス行政書士法人|毎日5組限定契約書・利用規約の無料チェックお手元の書類の問題点を、行政書士が詳しく指摘します。1書類につき24時間以内に回答・お1人様3種類まで無料チェックの詳細を見る›

ご依頼の前に:対応の内容

詳しい内容を見る

セミナー・講演・研修に関する契約書の作成・見直しは、お気軽にご相談ください。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「セミナー・研修・講演の契約ガイドを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(365日・深夜や休祭日も通常対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成・点検だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

申込フォーム・お電話でもご相談いただけます。

ご依頼・納品の流れを見る