このページの要点
- 集める時点で利用目的をできる限り特定し、申込みフォームの近くで本人に明示する。目的の範囲を超える利用には本人の同意が要る。
- 講師・共催者への名簿の提供は、第三者提供・委託・共同利用のどれに当たるかを先に決め、それぞれに必要な手当てをする。
- 名簿を営業のメールに使うなら、個人情報保護法とは別に、特定電子メール法の同意と、同意の記録の保存を確認する。
- 終了後の消去・返却、持ち帰りメモや名刺の扱い、漏えい時の連絡までを、契約書の条項と運営メモに落とし込む。
結論:名簿は「誰のものか」ではなく「何の目的で集め、誰が何をしてよいか」で決める
セミナーや講演会の申込みを受け付けると、氏名、会社名、メールアドレス、電話番号、ときには職種や悩みの内容といった情報が集まります。会場で受け付けをすれば名簿ができ、終了後にアンケートを配れば回答が集まり、懇親の場では名刺が交換されます。これらは、後日の案内や次回の企画に役立つ一方で、個人の情報をまとめたものですから、集め方・使い方・渡し方に法律上の枠があります。
契約書づくりの場面でよく話題になるのは、「名簿は主催者のものか、講師のものか」「共催した会社が後日、営業のメールを送ってよいか」といった所有や帰属の問いです。ただ、個人情報保護法が規律するのは、情報の「持ち主」ではなく、個人情報を事業に使う者の「取扱い」です。したがって、名簿をめぐる約束を書面にするときは、帰属という言葉で割り切るよりも、集めるときに伝えた利用目的の範囲で、誰が、どの情報を、どの方法で使ってよいかを決めるほうが、実際の運営に合います。
このページの結論は次の四つです。第一に、集める時点で利用目的をできる限り特定し、申込みフォームや受付で本人に伝えること。第二に、講師や共催者に名簿を渡すときは、「第三者への提供」「委託」「共同利用」のどれに当たるのかを先に決め、それに合った手当てをすること。第三に、名簿を使って営業のメールを送るなら、個人情報保護法とは別に、特定電子メール法の同意の枠を確認すること。第四に、催しの終了後に、消去・返却・持ち帰りの扱いまでを決めておくことです。なお、講師に出演してもらう録画や配信の許諾は講演・セミナーの録画・ライブ配信・アーカイブのページで、主催者と講師の間の勧誘の取決めはセミナー後の個別相談・商品販売への誘導のページで扱います。
名簿に載る情報と、主催者・講師・共催者の立場を分けて考える
最初に、どんな情報が、誰の手元に集まるのかを整理します。同じセミナーでも、申込みの窓口が主催者のサイトなのか、共催者のフォームなのか、講師のSNSなのかで、「最初に取得した者」が変わります。取得した者が、その情報を取り扱う責任を最初に負います。ここを曖昧にしたまま開催すると、後から「あの名簿は誰が管理しているのか」が分からなくなります。
名簿・アンケート・名刺を誰が受け取り、誰が責任を持つか(整理の例)
申込みフォームの回答主催者
申込みを受け付けた者が取得者です。利用目的の通知・明示の義務は、まずこの者にかかります。講師のサイトから申し込ませる場合は、フォームを運営する者が取得者になります。
当日の受付名簿主催者(受付を任せた者を含む)
受付の担当を講師の側が行う場合でも、誰の名簿として管理するのかを決めておきます。紙の名簿が会場に残ると、紛失の危険が高まります。
アンケートの回答取得させた者
アンケートを配る目的(内容の改善のための集計か、後日の案内か、講師への共有か)を用紙に書くのが基本です。
講師が交換した名刺名刺を受け取った講師
主催者が用意した催しの場であっても、講師個人が受け取った名刺は、講師が自らの事業に使う情報になる場合があります。主催者の名簿とは別の扱いにすることを、あらかじめ合意しておくと混乱が減ります。
共催者が集めた参加申込み共催者
共催者が自社の窓口で受け付けた分は共催者の取得です。両者で名簿を合わせる場合は、合わせる前提を申込み時に伝えます。
「帰属」の一語で整理せず、取得した者・管理する者・使ってよい範囲の三つを分けて書くと、後日の食い違いを防げます。
ここで押さえておきたいのは、個人情報保護法の対象になる範囲です。同法は、個人情報を含む情報の集合物で、特定の個人情報を検索できるように体系的に構成したもの(個人情報データベース等)を事業のために使っている者を「個人情報取扱事業者」と定めています(同法16条2項)。表計算ソフトにまとめた参加者の一覧は、この典型です。検索できる形に整理された名簿の中の個人情報は「個人データ」と呼ばれ(同条3項)、第三者への提供や安全管理の規律がかかります。小規模な勉強会であっても、事業として運営し、参加者の一覧を表計算ソフトで管理しているなら、対象から外れると考えないほうが安全です。
集める場面:利用目的の特定と、本人への通知・明示
個人情報取扱事業者は、個人情報を取り扱うにあたって、その利用の目的をできる限り特定しなければなりません(個人情報保護法17条1項)。「事業活動のため」のような広すぎる書き方ではなく、「セミナーの受付と参加者への連絡のため」「次回以降の催しの案内のため」「講師への参加者の属性(人数や業種の傾向)の共有のため」のように、本人が何に使われるかを想像できる粒度にします。あとから目的を変える場合も、変更前の目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲を超えてはなりません(同条2項)。
特定した目的は、本人に伝えます。個人情報を取得した場合は、あらかじめ目的を公表している場合を除き、速やかに本人に通知し、または公表します(同法21条1項)。申込みフォームのように、本人から直接、書面(電磁的記録を含む)に記載された個人情報を取得する場合は、あらかじめ、本人に対して利用目的を明示しなければなりません(同条2項)。ウェブの申込みフォームなら、入力欄の近くや送信ボタンの手前に、利用目的を表示するのが通常の実務です。利用目的を別のページに置く場合は、申込み画面から1回の操作で移れるリンクを置いておけば足ります。ただし、取得の状況からみて利用目的が明らかであると認められる場合は、この通知・公表の規定は適用されません(同条4項4号)。たとえば、当日の受付で参加の確認のために氏名を名乗ってもらうだけなら、目的は明らかといえる場合が多いでしょう。一方で、後日の案内や講師への提供まで予定しているなら、明らかとはいえませんから、明示しておく必要があります。
さらに、目的の範囲を超えて個人情報を取り扱うには、あらかじめ本人の同意が要ります(同法18条1項)。「当日の連絡のために取得した電話番号を、後日、別の商品の案内に使う」といった使い方は、この点で問題になりやすい典型です。
書き方の例(一般的な例) 申込みフォームの利用目的の書き方
利用目的の粒度
理由広すぎる書き方は特定したとは評価しにくく、本人も何に使われるのか分かりません。目的ごとに分けて書くと、後日の範囲の確認もしやすくなります。
講師への提供
理由講師が名簿を見る運営は珍しくありません。書いておけば、第三者提供に当たるのかを整理する出発点にもなります。
共催者との共有
理由共同利用として整理する場合は、共同して利用する旨、項目、範囲、利用目的、責任者の氏名等を、あらかじめ本人に通知するか、容易に知り得る状態に置く必要があります。
講師・共催者に渡すとき:第三者提供、委託、共同利用の見分け方
名簿をめぐる最も実務的な問いは、「参加者名簿を講師や共催者に渡してよいか」です。個人情報取扱事業者は、法令に基づく場合などの例外を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人データを第三者に提供してはなりません(個人情報保護法27条1項)。したがって、講師や共催者が主催者とは別の事業者であれば、名簿を渡すことは原則として「第三者への提供」であり、本人の同意が要ります。
ただし、同条5項は、一定の場合に提供を受ける者を「第三者に該当しない」と定めています。実務では、次の二つが関わります。一つ目は委託です(同項1号)。利用目的の達成に必要な範囲内で個人データの取扱いの全部または一部を委託することに伴って提供される場合で、たとえば当日の受付や案内状の発送を外部の事業者に任せる場合です。この場合、委託する側は、委託を受けた者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません(同法25条)。二つ目は共同利用です(同項3号)。特定の者との間で共同して利用される個人データを当該特定の者に提供する場合で、あらかじめ、その旨、共同して利用される個人データの項目、共同して利用する者の範囲、利用する者の利用目的、管理について責任を有する者の氏名または名称および住所(法人の場合は代表者の氏名)を、本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置いているときに限られます。
ここで気をつけたいのは、講師に名簿を見せる目的が「当日の運営の補助」なのか、「講師が自分の事業の案内に使うため」なのかで、整理が変わる点です。前者は、主催者の利用目的の範囲内で、講師を運営の一員として関わらせる形ですから、委託や共同利用で整理しやすい場面です。後者は、講師が自らの目的で使うものですから、第三者への提供として本人の同意を取るか、取らずに提供しない運営を選ぶのが筋です。契約書には、どちらの運営なのかを書き分けておきます。
名簿を動かす場面ごとの整理(一般的な整理の例)
| 場面 | 扱い | 必要な手当て | 契約書に書くこと |
|---|---|---|---|
| 講師が当日の進行のために名簿を見る | 条件付き | 運営補助の委託(27条5項1号)として整理できれば、本人の同意は不要。講師には委託先として監督(25条)を及ぼす | 閲覧の範囲、持ち帰りの禁止、返却・廃棄、監督の方法 |
| 受付や発送を外部の事業者に任せる | 条件付き | 委託先の監督(25条) | 取扱いの範囲、再委託の可否、事故時の報告 |
| 主催者と共催者が共同で名簿を使う | 条件付き | 共同利用の通知・容易に知り得る状態(27条5項3号) | 共同して使う者、項目、目的、責任者 |
| 講師が自分の事業の案内に使う | 条件付き | 原則として本人の同意(27条1項) | 同意の取得方法、同意のない参加者は除くこと |
| 共催者が後日、営業のメールを送る | 条件付き | 個人情報保護法と特定電子メール法の両方を確認 | 同意の記録の保存、送信の可否、配信停止 |
| 名簿を他の催しの集客に流用する | 許さない | 目的外利用になりやすい(18条) | 禁止する旨と、例外を認める場合の書面承諾 |
表の「条件付き」は、各条文の要件を満たすことが前提です。実際の当てはめは、申込み時に何を伝えたかで変わります。
外国にあるクラウドサービスや、海外事業者が運営するウェビナーツールに名簿を預ける場合は、外国にある第三者への提供(同法28条)の整理が別に必要になる場合があります。委託の形で預ける場合でも、外国の事業者に預けるときの扱いは、個人情報保護委員会の解説で確認する必要があります。会場とウェビナーの条件の読み方は会場とウェビナーの利用条件を確認するのページで扱っています。
名簿を営業に使うとき:特定電子メール法と、利用目的との関係
名簿を次の催しの案内や商品の紹介に使いたい、という要望は多く出ます。ここでは二つの法律を重ねて確認します。
一つ目は個人情報保護法です。申込み時に「次回以降の催しのご案内」を利用目的として示していれば、その範囲での案内は目的内の利用です。示していなかった場合や、他の事業者の商品の案内に使う場合は、目的の範囲を超える利用になり得ますから、本人の同意(同法18条1項)が要ります。
二つ目は特定電子メール法です。営利を目的とする団体や営業を営む個人(送信者)が、自己または他人の営業について広告または宣伝を行うための手段として送信する電子メールを「特定電子メール」といいます(同法2条2号)。送信者は、あらかじめ送信を求める旨または同意する旨を通知した者などを除き、特定電子メールを送信してはなりません(同法3条1項)。例外は、(1)送信を求め、または同意する旨を通知した者、(2)省令の定めるところにより自己のメールアドレスを通知した者、(3)広告の対象の営業を営む者と取引関係にある者、(4)省令の定めるところによりメールアドレスを公表している団体または個人(個人は営業を営む者に限る)、です(同項1号〜4号)。同意を得た者に対しても、同意があったことを証する記録を保存する義務があります(同条2項)。送信しないように求められたときは、その意思に反して送信してはなりません(同条3項)。
ここから導かれる運営上のポイントは三つあります。第一に、セミナーの申込みを受けただけでは、広告メールへの同意があったとは限りません。申込みフォームに、案内メールを受け取ることへの同意の欄を別に設けるのが、記録も残しやすい進め方です。第二に、共催者や講師が自分の名義で送るメールは、送信者がその共催者や講師になります。主催者の同意取得が、そのまま他の事業者の分まで及ぶとは限りません。第三に、名簿を渡す側の契約書に、同意の範囲、同意の記録の保存、配信停止の求めへの対応を書いておくことです。なお、開催案内や受講確認のように、申込みをした本人に必要な連絡を行うメールは、広告宣伝を主たる目的とするものではなく、特定電子メールには当たらない場合があります。その線引きは、文面の中身で決まります。
名簿を守る:安全管理、営業秘密、終了後の消去
名簿は、集めた後の管理も約束の対象です。個人情報取扱事業者は、取り扱う個人データの漏えい、滅失、毀損の防止その他の安全管理のために、必要かつ適切な措置を講じなければなりません(個人情報保護法23条)。従業者に取り扱わせるときは必要かつ適切な監督を行い(同法24条)、委託する場合は委託先を監督します(同法25条)。講師が会場で名簿を閲覧する、共催者が名簿のデータを受け取る、受付のスタッフが名簿を持ち帰る、といった運営の一つひとつが、この安全管理の対象です。
名簿の安全管理で、契約書または運営メモに書いておく項目
- 名簿の形式(紙か電子か)と、閲覧できる人の範囲
- 電子の名簿の送り方(パスワード付きの共有、期限付きのリンクなど)と、受け取った後の保存場所
- 当日、会場に紙の名簿を置く時間と、回収の担当者
- 講師が控えを取る場合の範囲(氏名のみか、所属まで認めるか)と、持ち帰りの可否
- 終了後の消去または返却の期限と、完了の連絡の方法
- 漏えいや紛失が分かったときに、誰に・どの順で連絡するか
- 再委託(受付や発送を別の事業者に任せること)の可否
個人データは、利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めなければなりません(同法22条)。催しが終わって連絡の必要がなくなった名簿を、そのまま講師の手元に残さない運営は、この規律にも合います。
もう一つの観点が、名簿の営業秘密としての保護です。不正競争防止法は、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上または営業上の情報で、公然と知られていないものを「営業秘密」と定めています(同法2条6項)。営業秘密保有者から営業秘密を示された者が、不正の利益を得る目的や、保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、または開示する行為は、不正競争に当たります(同法2条1項7号)。顧客の名簿が営業秘密として保護されるには、「秘密として管理されている」ことが前提ですから、閲覧できる者を限り、秘密である旨を伝えるなど、管理の実態が問われます。契約書の中で、名簿を秘密情報として扱い、目的外に使わないこと、第三者に開示しないことを講師・共催者に約束させておくことは、この管理の一部になります。
最後に、講師が持ち帰るメモや名刺の扱いです。講師が会場で自ら受け取った名刺は、講師の事業に使われる前提のものと整理できる場合があります。反対に、主催者が受付で預かった名刺や、アンケートに書かれた連絡先を、講師にそのまま渡す運営は、前に述べた提供の整理が要ります。誰が受け取った情報なのかで扱いが変わりますから、催しの開始前に、講師との間で共有しておくのが望ましい運営です。
名簿の取扱いを契約書に書くときの条文例と、確認の問い
ここまでの整理を、講師との契約書や共催の契約書に落とし込むときの書き方の例を示します。数字や期限は、実際の運営に合わせて決めます。
条文例参加者情報の取扱い(書き方の例・一般的な例)
- 甲(主催者)は、本セミナーの参加者から取得した氏名、所属、連絡先その他の情報(以下「参加者情報」という。)を、甲が本人に示した利用目的の範囲内で取り扱う。
- 乙(講師)は、甲から開示された参加者情報を、本セミナーの進行および質疑のためにのみ利用し、前項の目的以外の目的(自己または第三者の営業、勧誘、広告、名簿の作成を含む。)に利用してはならない。
- 乙は、参加者情報を複製し、または第三者に開示してはならない。ただし、甲の書面(電磁的方法を含む。)による事前の承諾を得た場合は、承諾の範囲に限り、この限りでない。
- 乙は、参加者情報の漏えい、滅失または毀損のおそれがあることを知ったときは、直ちに甲に通知し、甲の指示に従う。
- 乙は、本セミナーの終了後○日以内に、参加者情報を甲に返却し、または消去し、その旨を甲に書面(電磁的方法を含む。)で報告する。
- 乙が会場で自ら受領した名刺その他の情報は、甲の参加者情報には含まれない。ただし、乙は、受領の際に利用目的を相手方に示し、法令に従って取り扱う。
営業への利用を認める場合は、第3項の例外として、「参加者本人から営業案内への同意を得た者に限る」「同意の記録を保存する」「配信停止の求めに従う」といった条件を足します。日数は「○日」と伏せています。
確認の問いと理由名簿の取扱いを決めるときの確認の問い
申込みの窓口は誰のサイトやフォームか。
取得者が誰かで、利用目的の通知・明示の責任の所在が決まります。
申込み時に、利用目的として何を示したか。
示した範囲が、講師・共催者に渡してよい範囲の出発点になります。
講師や共催者は、名簿を何のために見るのか(運営の補助か、自分の営業か)。
運営の補助なら委託・共同利用の整理、自分の営業なら同意の取得が必要になります。
営業のメールを送る予定があるなら、誰の名義で送るか。
送信者の名義ごとに、特定電子メール法の同意の確認が要ります。
同意を取る場合、記録をどこに、いつまで残すか。
同意があったことを証する記録の保存は法律上の義務です。
終了後、名簿を誰が、いつまでに消去または返却するか。
不要になった個人データを残さないために、期限と報告の方法まで決めておきます。
回答が出そろったら、利用目的の表示、提供の整理、契約書の条文の順に反映させます。
起きがちなこと
契約書作成の実務の経験をもとに、名簿・アンケート・名刺にまつわる場面で起きがちなことをまとめます。多くの契約書で見られる傾向として、名簿の取扱いは、開催前の合意の対象から外れやすい項目です。
名簿の取扱いで起きがちなこと
- 申込みフォームに利用目的を書いておらず、後日、共催者から営業のメールが届いたことに参加者が驚き、主催者に苦情が寄せられる。
- 講師が、会場で見た名簿の情報を控え、後日、自分の講座の案内を個別に送る。主催者は、講師に何も約束させていなかった。
- 共催の相手に名簿をメールで丸ごと送ったが、ファイルにパスワードがなく、宛先の取り違えで関係のない人に届いた。
- 終了後も、受付を手伝った人のパソコンに名簿が残っていた。誰も消去を確認していなかった。
- 「次回の案内」に同意したつもりのない参加者が、案内の停止を求めたが、誰が窓口か分からず、対応が遅れた。
- 参加者が、自分の情報が目的外に使われているとして、利用停止を求めた(個人情報保護法35条)。名簿の保管場所が複数に分かれ、対応に時間がかかった。
名簿の扱いは、講師料や資料の権利に比べて地味ですが、参加者との信頼に直結します。申込みの時点で伝えたことと、その後の使い方が合っているか。この一点を、開催前の打合せで確かめておくだけでも、後日の食い違いはかなり減ります。トラブルになったときの整理は、セミナー・講演でうまくいかなかったとき/よくある質問のページにまとめています。
よくあるご質問
セミナーの参加者名簿を、講師に渡してよいですか。
講師が主催者とは別の事業者であれば、名簿を渡すことは原則として第三者への提供にあたり、あらかじめ本人の同意が要ります(個人情報保護法27条1項)。ただし、当日の運営の補助を委託する整理や、共同利用の整理(同条5項)が成り立つ場合は、第三者に該当しないものとして扱えます。講師が自分の営業のために使うなら、同意を取るか、渡さない運営を選ぶのが筋です。どの整理をとるかを、契約書に書き分けておきます。
共催の相手が、後日、参加者に営業のメールを送ってよいですか。
個人情報保護法の利用目的の範囲と、特定電子メール法の同意の両方を確認します。送信者は共催の相手になりますから、主催者の側で取った同意が、そのまま及ぶとは限りません。送信を求め、または同意する旨を通知した者などに限って送信でき(特定電子メール法3条1項)、同意の記録を保存する義務もあります(同条2項)。申込みフォームに、案内を受け取ることへの同意の欄を別に設けるのが、実務では分かりやすい方法です。
利用目的は、申込みフォームのどこに書けばよいですか。
本人から直接、書面(電磁的記録を含む)で情報を取得する場合は、あらかじめ利用目的を本人に明示しなければなりません(個人情報保護法21条2項)。入力欄の近くか、送信ボタンの手前に表示します。利用目的を別のページに置く場合は、申込み画面から1回の操作で移れるリンクを置けば足ります。目的は「受付と連絡」「次回以降の案内」「集計」のように、分けて書くと、あとから範囲を確認しやすくなります。
講師が会場で受け取った名刺は、主催者の名簿に入りますか。
講師が自ら受け取った名刺は、講師の事業に使われる前提のものとして、主催者の名簿とは別に整理できる場合があります。主催者が受付で預かった名刺や、アンケートの連絡先は別です。誰が受け取った情報かで扱いが変わりますから、開催前に、講師との間で「講師が受け取った名刺は講師の情報、主催者が集めた情報は主催者の情報」という線引きを共有しておくと、混乱が減ります。
催しが終わったら、名簿は消さなければいけませんか。
個人データは、利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めなければなりません(個人情報保護法22条)。次回の案内を利用目的に示していて、その範囲で使い続けるなら、保管を続けることは目的内です。他方で、講師や受付の担当者に渡した控えは、目的が終われば返却または消去するのが適切です。契約書には、期限と完了の報告の方法を書いておきます。
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本ページは一般的な情報提供です。個別の取引への当てはめは、契約の内容や催しの仕組みによって異なることがあります。書き方の例として紹介している内容は、契約書作成の実務でよく見られる書き方を整理した例で、特定の事業者や案件を示すものではありません。条文は e-Gov法令検索で確認しています。参考: e-Gov法令検索 / 消費者庁 / 個人情報保護委員会 / 公正取引委員会